ジャーナル
AI利用の統制は、なぜ「禁止か放置か」の二択になるのか
企業のAI利用に対する方針は、実務上ほぼ二つに収束します。全面禁止か、実質的な放置かです。中間があってしかるべきなのに、なぜそうならないのか。
中間が選ばれない理由は、判断コストにある
「原則禁止、ただし申請すれば許可」という運用は、一見すると妥当な折衷案です。しかし実際に導入すると、申請件数が想定を超えて増え、承認者が処理しきれなくなります。
結果として起きるのは二つのどちらかです。承認が滞留して現場が待てなくなり、申請せずに使い始める。あるいは承認者が内容を精査せず機械的に通すようになり、承認プロセスが形骸化する。どちらの場合も、統制は成立していません。
つまり中間が選ばれないのは、意思の問題ではなく処理能力の問題です。
何を減らすべきか
したがって設計上の要点は、判断の質を上げることではなく、判断が必要な件数そのものを減らすことにあります。
具体的には三つの方向があります。第一に、事前分類の精度を上げて、そもそも判断が不要な利用を自動的に振り分けること。第二に、繰り返し現れるパターンをテンプレート化し、条件を満たすものは自動的に許可すること。第三に、権限に期限を設けて、失効を既定の状態にすること。
三つ目は見落とされがちですが重要です。期限のない許可は、増える一方で減りません。棚卸しを人手で行う運用は、必ずどこかで止まります。
統制の設計は、承認フローの設計ではない
以上をまとめると、AI利用の統制で本当に設計すべきなのは、承認画面の使い勝手ではありません。判断が発生する頻度と、発生した判断が蓄積されて次の自動化につながる構造です。
前者だけを作ると、承認件数の増加とともに破綻します。